HIVのワクチン

【生活世界―システム4】


学校のクラスメートが、「すげーよなあ」とか言ってたニュースがあるので、今日はそれを掘り下げてみる。


エイズ感染リスク3割減少=2種類混合の新ワクチン−タイ
9月24日20時52分配信 時事通信

 
バンコク時事】タイ保健省は24日、2種類を混合したワクチンにより、エイズウイルス(HIV)の感染リスクが約3割減少したとする臨床試験結果を発表した。同省は「HIVワクチンの予防効果が立証された初めての例であり、大きな躍進だ」としている。
 AFP通信などによると、タイと米国の研究者が協力。仏企業製のカナリア痘ワクチンと米国の製薬会社が開発したHIVワクチンを組み合わせて使用した。
 試験は2003年、タイ中部チョンブリ、ラヨン両県で実施。HIVに感染していない18〜30歳のボランティア男女約1万6000人の半数にワクチンを投与した。 


2種混合ワクチンにて、 HIV感染リスクを約3割減少させられたとのニュースです。まあ、確かに研究が進んだこと自体は、研究者たちにとってはいいのでしょうけれど。


現在のところ、予防ワクチンというものの意義は、どれくらいあるのかな〜と疑問です。罹患患者の3分の2は、貧乏なサハラ以南(南アフリカ)に居住しており、いくら予防ワクチンがあっても、購入できないというのが現状でしょう。その原因については、多少後述します。


今日は、HIV問題について、自分なりにまとめたいと思います。


HIV問題とは?


国連合同エイズ計画が、2008年に発表した統計では、全世界のHIV感染者は、約3300万人です。罹患し、発病をしたら、日和見感染症などによって、死に至ります。


対処法としては、2つあります。


1つは、HIV感染を防ぐこと。コンドームなどの避妊具の使用によるセイファーセックスなどが、代表例です。


2つ目は、感染後、抗HIV薬を使用する方法です。多剤併用方法(HAART療法)により、血中のウイルスを測定感度以下にまで、抑えることができるようになったようです。代表的な薬は、AZT、ddI。


ワクチンの開発改良によって、一日1回〜2回の服用で、発病を遅らせることができるとのこと。人によっては、糖尿病のような慢性疾患として捉えられる―――強力な薬のために、長期投与で、肝疾患に陥る場合があるようです。


では、具体的に何が問題なのか?


1.死に至ること 2.差別されること 3.薬が手に入らないこと


1については、そのままの意味です。周知の通り、HIVウイルスは、免疫細胞(CD4陽性T細胞)を破壊し、日和見感染症に罹患させ、死に至らしめます。


ニューモシスチス肺炎、カポジ肉腫、悪性リンパ腫、皮膚ガンなどの悪性腫瘍、サイトメガロウイルスによる身体の異常など、様々な疾患にかかってしまいます。


2について。HIV感染経路に関わる問題です。HIVの感染力は、きわめて低く、滅多には感染しないようです。


a.血液感染 


HIV感染した血液が、傷口に触れたり、麻薬の注射針の使いまわしによって、感染するパターン。日本の医療現場では、88年には、注射針の使いまわしは徹底的に禁止されたので、今ではありえないでしょうけど。肝炎の罹患にも関わってくる話です。汚染輸血では、95%の確率で感染します。


b.性行為感染


性分泌物(精液、膣分泌液)が、身体の粘膜に直接触れ、そのまま血液に感染するパターン。男性同性愛者にとりわけ多い。性器の潰瘍があると、2〜4倍感染率は高くなります。


とはいえ、男性同士では、一回の性交につき、0.1〜3.0%の確率、異性同士の一回の性交では、0.1〜0.2%の確率で感染です。けっして確率は高くはありません。だからこそ、偏見につながりやすいともいえますが、後述します。


c.母子感染


産道通過と母乳が主な感染源となります。帝王切開や粉ミルクである程度防ぐことができるとのこと。母親に、抗HIV薬を投与することで、感染を防げる場合があるようです。


2について。


http://www.cnn.co.jp/world/CNN200908250029.html


上記の記事に見られるような偏見があります。偏見を分類します。


d.何かの拍子で、簡単に感染してしまうのではないか?


上記したように、日常生活において、簡単に感染することはない。しかし、知識は知っていても、それが信用できず、過剰に神経質になる人もいるようです。


http://www.mudaijp.com/wp/5753.html


上記のURLは、2ちゃんねるのまとめですが、拒否反応を起こしている人が少なからずいます(途中で、HIVによる日和見感染者の画像がありますので、注意。カポジ肉腫かもしれません。ともあれ、HIVの怖さを視覚的に実感することができます)


内閣府エイズに関する世論調査(2000年)では、45パーセントの人が、「HIV患者と同じ職場で働きたくない」と回答しています。


e.性的タブーを破っている?


不特定多数と多くの性的関係を結んだからではないか?男性の場合、同性愛者なのではないか?宗教上の戒律を破っているのではないか?


関連URL↓

http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/20050519sw91.htm

http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2622831/4380874

確かにその可能性はありますが、前者2つについては、客観的には、ライフスタイルの自由の問題であり、とやかくはいえないはずですが、やはりそこには、「自業自得だ」という偏見の目が入ることが多いでしょう。


3について。現実的に、薬があるにも関わらず、種々の要因から、それを手に入れることができないという問題。


f.経済的問題


薬が高価で手に入らない。薬剤の開発、使用に対する使用料の問題もあります。


この問題の対処として、関連するページを貼っておきます。


http://www.toppan.co.jp/news/newsrelease923.html

 
つまり、オーダーメイド医療によって、医療を抑制するということです。


g.政治的・宗教的問題


国民主権でない場合。イスラム圏など、性がタブーになっている場合。


3のポイントは、薬があるにも関わらず、その障壁があるせいで、不自由を感じてしまう、という点です。


というわけで、多層的なHIV問題を切り分けてみました。


ともあれ、対処法は、レベルを分けて、ひとつひとつ地道にやっていくほかないのでしょう。


最後に、日本エイズ学会のHPを貼っておきます。


http://jaids.umin.ac.jp/journal/journal_vol09_no03_j.html